Dec 28, 2008

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 通販のヒット商品「茶のしずく石鹸(せっけん)」を使っていた人が小麦アレルギーの症状を起こしていたことが分かり、製造販売元の「悠香」(本社・福岡県大野城市)が先月20日から、対象商品の自主回収を進めている。せっけんに配合された小麦由来成分が原因とみられる「運動誘発性アレルギー」とされ、67件の発症例が報告されている。どのようなアレルギーなのか。【小島正美】

 ◇保湿などに効果、多くの化粧品に/軽い運動で誘発

 神奈川県内の元会社員の女性(38)は5年前、茶のしずく石鹸を買って使い始めた。約2年後、目の周りがかゆくなり、鼻水が止まらなくなった。ある日、ピザを食べ、お酒を飲んだ後に買い物に行く途中、全身にじんましんが出た。顔は腫れあがり、呼吸ができないほど息苦しくなった。急性の重い全身性アレルギー反応の一つ「アナフィラキシー」だった。

 しばらく原因が分からなかったが、昨年5月、神奈川県内の国立病院でせっけんを使っていることを話すと、他にも同様の患者がいることが分かった。女性は、せっけんを使う以前はアレルギー症状がなかった。せっけんの使用をやめると顔の腫れは和らいだが、小麦アレルギーでパンなどが食べられなくなった。仕事中に症状が出ることもあり、昨年1月、仕事を辞めざるを得なくなった。「メーカーに医療費などを補償してほしい」と話している。

 広島大学病院皮膚科では昨年1年間に、食物依存性運動誘発性アナフィラキシーと診断された患者が26人いた。小麦が原因の人は22人で、問診できた17人のうち16人は「茶のしずく石鹸」を使っていた。

 食物アレルギーの専門医がいる藤田保健衛生大学病院(愛知県豊明市)でも昨年春から、同様の症状を訴える患者が愛知、三重、岐阜などから来院し、11例を数えた。いずれも同せっけんを使っていたという。

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 「茶のしずく石鹸」は60グラムで1個1980円などと高価ながら、CM宣伝などで売り上げを伸ばしてきた。自主回収の対象は昨年12月7日以前に販売された製品で、約4600万個に上る。小麦を加水分解した成分(小麦加水分解物)が配合されていたが、同12月8日以降に販売した新製品には使われていないという。

 日本化粧品工業連合会によると、小麦加水分解物は、酸や酵素によって人工的に分解された小麦たんぱくの一種。保湿や泡立ちをよくするなどの作用があり、94年から乳液、洗顔フォームなど化粧品に幅広く使われている。「茶のしずく石鹸」以外にはアレルギー症例の報告はないという。

 同せっけん利用者の症例を学会で発表した広島大病院皮膚科の平郡(ひらぐん)真記子医師によると、せっけんを頻繁に使うことで皮膚のバリアー機能が低くなったり、顔を洗うたびに目や鼻の粘膜に小麦加水分解物が繰り返し付着したため、アレルギーが起きた可能性が考えられるという。「小麦アレルギーを起こした人は、小麦加水分解物が入った化粧品は避けた方が良い」と話す。

 運動誘発性アレルギーは、特定の食べ物を食べて運動した後に、じんましんや呼吸困難などの症状が出る。小麦のほか、エビ、カニなど甲殻類が多い。小麦のたんぱく質は通常、胃や腸で分解されるが、運動すると消化が不十分なまま体に吸収されやすい。体が危険なものと判断して免疫機能が働き、アレルギー症状が出てしまうとみられる。

 食物アレルギー治療で知られる藤田保健衛生大医学部の松永佳世子教授は「これまでは食後に激しい運動をしてアナフィラキシーを起こすケースが多かったが、今回は散歩など軽い運動でもアレルギー症状になるケースが目立つ」と話す。「まだ気づかずにせっけんを使っている人がいて、今後アレルギーを起こす恐れが十分に予想される」とし、今使っているせっけんに小麦成分が含まれていないか、確かめてほしいと呼びかける。

 日本アレルギー学会は今回の事態を重く見て、小麦由来などの「たんぱく加水分解物」を含む化粧品の安全対策を考える特別委員会(委員長・松永教授)を結成した。日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会と協力しながら、アレルギー防止策を検討していくという。

 ◇「お客様窓口」を開設

 「悠香」はこれまで、約2万個を回収したという。同社の担当者は「お客様からの問い合わせが多く、ご迷惑をおかけし申し訳ありません。薬事法違反には当たりませんが、社会的責任を感じており、患者の方にはお見舞金を出すことを考えています」と話している。

 同社は「お客様窓口」を設けている。フリーダイヤル0120・11・2266(午前9時〜午後8時)。電話が相次ぎ、つながりにくい状態だという。

 ◇厚労省など使用中止呼びかけ

 「茶のしずく石鹸」は医薬部外品で成分の安全性は厚生労働省の審査で確認されているが、人によってアレルギーが起こる成分でも、必ずしも使用が規制されるわけではない。厚労省は今回、注意喚起と副作用報告の徹底を関係業者に通知した。アレルギーがこの商品に特有のものか、爆発的に売れた商品で使用頻度や人数が多かったためか、など不明な点は多いものの、とりあえずは「12月7日以前の製品の使用は中止してください」と呼びかけている。消費者庁も「返品して新製品と取り換えるよう」呼びかけている。

 ◇患者・医師向けにQ&A公開

 国立病院機構・相模原病院臨床研究センター(相模原市)の福冨友馬医師らは、患者・医師向けにQ&Aをつくり、ウェブサイト「リウマチ・アレルギー情報センター」で公開している。症状や発症メカニズムを解説し、食物アレルギーの専門医のいる医療機関も紹介している。同サイトでは、67件の発症例は「氷山の一角」で、「報告されていない患者が少なくとも10倍以上は存在すると推測される」と指摘している。

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